【春香SS】会いにいくよ②
①→ https://stantonharuka.hatenablog.com/entry/2019/06/01/214358
プロデューサーの俺が言うのも何だが、「天海春香」というアイドルは、客観的に見ても売れているアイドルだと思う。
オーディションを受けなくても、テレビ番組の出演オファーが結構来る。
ラジオの公録をやれば、500席がすぐ埋まる。
ソロシングルをだせば、特に働きかけなくても情報番組に取り上げられる。
そんでもって、プロデューサーの俺が言うのも何だが、「天海春香」というアイドルには何の魅力があるのかがわからない。
歌が特別うまいわけじゃないし。
ダンスが上手いわけじゃないし。
びっくりするような見た目ではないし。
ただ、これだけは自信を持って言える。
「天海春香はアイドルに向いている」
なんで向いているのかって?そりゃあ……
「あのっ、プロデューサーさん。ちょっとお願いが……」
さっき、こう言われて身構えたんだが、内容は何というか春香らしいものだった。
「お願いってなんだ」
「ここの日曜日って空いてますよね。もしよかったら...なんですけど、イベントを企画してもらえませんか。できれば、この住所の近くで」
「イベントって……急だな」
「無理を言っちゃってごめんなさい。でも、私、この子に会ってみたいんです。ううん、きっと、会わないといけないんです。ちょっとこの手紙、読んでもらえませんか」
「えっと、手紙?……あー」
「たぶん小学生くらいの女の子だと思うんですけど、私に会いたがってるんです」
「『いつかきてほしいです、会いたいです』か......」
「プロデューサーさんに、お話したことありましたっけ。私の思い出話」
「思い出話?」
「小さい頃に、よくテレビで見ていた憧れのアイドルがいたんですけど、そのアイドルのコンサートが近くでやるからって、お母さんに連れて行ってもらったんですよ。席は遠かったんですけど、実際のアイドルは可愛かったし、「いちばん後ろの席まで見えてるからねー!」って言ってもらえてもう嬉しくって!」
「それはよかったな。アイドルに憧れていた春香が、いまは誰かから憧れられる立場になった」
「えへへ、そう言われるとなんだか照れちゃいますね。でも、だからこそ、アイドルになった私が会いに行かなきゃって、そう思ったんですよ」
「うーん……「企画する」って、約束したい気持ちは山々なんだけど」
「だめ、ですか?」
「前日はラジオの収録に取材が入ってるだろ?ハードスケジュールだからやっぱり……」
「......」
「......」
「......あははっ。春香って、結構頑固なところあるよな」
「じゃあ......!」
「できるだけ、頑張ってみるよ」
「ありがとうございますっ!」
天海春香はアイドルに向いている。
なんで向いているのかって?
さて、あの地方にいいハコあったかな……